「里奈、今度の土日何してる?」

「今度? 何もないけどどうして?」

「妹が会ってみたいって」

「ギャルの? 話噛み合うかな」

「今は落ち着いてるよ。週末久しぶりに実家に帰ってくるから、里奈の話したらすごい食いついてさ。まあ俺が初めて彼女の話したし」

「冗談だよ。祐介の妹会ってみたい。凄く気になる」

祐介の妹は二つ下の二一歳、妹といっても私にとっては成人した大人の女性だ。子どもっぽいと思われるのは嫌で、髪の毛でも巻いて行こうかと数日悩み通した。祐介にいつも通りでいいよと言われたので、前日に念入りにトリートメントだけして黒髪ストレートのままにした。

土曜の昼過ぎ、祐介の家の前で待ち合わせをする。玄関から祐介が現れて、人目を避けるとそっと私を抱き寄せておでこにキスをした。

中へ案内されると妹の夏菜子さんはすでにダイニングで寛いでいた。私の隣に祐介、その向かいに夏菜子さんの位置で座る。

初めて会った印象は、話で聞いていた人物とまったく異なって、暗めの茶髪に緩くパーマを当てて、鎖骨ほどの長さの可愛らしく清楚な印象だった。肌は健康的な色をしていて、過去のギャルの名残だろうかと想像した。目元はしっかりアイラインを引いていたが、ナチュラルに仕上がっている。シャドウがきらきらと反射していた。

「妹の夏菜子。こっちは」祐介が紹介しているとまだ言い終わらぬうちに夏菜子さんが口を開いた。

「里奈ちゃん。可愛い! お兄ちゃんにはもったいない!」

目を輝かせて体を乗り出し、私に握手を求める。祐介にそっくりなのに、ゴツゴツした祐介に比べてふっくらした頬とぽってりした唇が女の子らしく、全然違って見えた。

「夏菜子さんは今大学生なんですよね? やっぱり勉強は大変なんですか?」

「試験も終わってあたしは遊んでばっかりだよー」

夏菜子さんはとてもテンションが高くて明るい。話の中心になって盛り上げてくれるので、私と祐介はずっと笑いっぱなしだった。あっという間に何時間も過ぎていた。

「今日夕飯はどうすんだ?」

「ごめん、彼氏に呼び出されちゃって。夏休みになったらバーベキューするんだけどお兄ちゃんと里奈ちゃんもおいでよ!」

「まったく忙しいやつだな」

「また連絡するねー」

そういって嵐のように去ってしまった。そんな夏菜子さんに私は笑いがこみ上げてしまう。

「良い人でよかった」

「あいつバカだから」

口ではそう言いながらも祐介の目は優しかった。三か月ぶりの妹に会えたことが嬉しいのだと思うと、私も何だか嬉しくなる。祐介の家族は仲が良いことが見受けられた。