まとめと今後の課題

ところで、ここまで述べてきたこととは別文脈で、ルーブリック評価を実践する上で考えておかねばならない点がある。私がこれを厳密に運用した実感だが、これによって単位認定基準が上がる傾向になるため、担当講義の合格率が低下する可能性がある。もし、さまざまな講義・演習でルーブリックによる厳密な成績評価を実施すれば、留年率の上昇およびGPA(Grade Point Average)の低下を引き起こすことが予想される。

この結果は、大学の外部に対して《学生の怠惰な生活を律する大学ではない》《学生の実情に合わせたカリキュラムシステムになっていない》というシグナルとなるかもしれない。もしくは、《学生を厳しくトレーニングさせるいい大学である》という真逆のシグナルになるかもしれない。

現状において、留年率の上昇傾向やGPAの全学的な低下傾向がボリュームゾーンにどう判断されるのかは定かではないが、厳密な成績評価運用をどう考えて、どう大学内外に積極的に発信するか? 教学改革を叫ぶのであればその成果がどう伝わるのか? そうしたことも考慮する必要があるだろう。

ここまでは私が個別に実践しているルーブリック評価についての報告が中心であったが、大半の教員にとっては思いもよらぬ話かもしれない。これを《面倒だ》と捉えるか、《面白そうだ》と捉えるか。このちょっとした気づきの差が講義風景を一変させるかもしれない。