なんとなく、このホビットのことを特別な存在なんだと、感じ取っているかのようでした。この風変わりな存在にすっかり心を惹きつけられたフォールは、本当に好きになってしまい、その気持ちを何とかして相手に伝えたいと思いました。
そこで、君の心をほぐして友達になりたいんだよ、と身振りで示して見せました。彼は相手を怖がらせないように、慎重にゆっくりと手を動かしました。そのホビットのような存在は、フォールの仕草を目でぼんやりと追うようにして、眺めていました。
最初は、全く反応がなく、目を動かすでも、体を動かすでもありませんでした。フォールは途方に暮れてしまい、どうすれば相手に気持ちが伝わるんだろうと思っていたその時、ホビットはまるで光が射したような表情を浮かべました。その目は、分かったよ、と言いたげに輝きました。まぶしい笑顔になり、すっかり喜びに満ち溢れていました。
二人は、やっと愛と友情で繋がったんだとわかり、フォールの心は、興奮と幸せではちきれそうでした。すると、そのホビットのような存在は、腕を広げて、嬉し気に声を上げながら、オランウータンのような仕草で、胸を軽く叩いたのです。彼はフォールに大きな笑みを投げかけ、近寄って来て、フォールを固く抱きしめました。フォールも笑ってそのホビットの背中を軽く叩きながら、抱きしめ返しました。
フォールは、友達が、それもすごく特別な友達ができたことを心から感じ、その友達から何かとてもすごいパワーをもらったのだと感じました。そのホビットは話すことはできないようだった、と言うか、全く異なる言語を持っているようでした。フォールにはどれも似たように聞こえる唸り声の言語でした。それでいながら、フォールにはそのホビットと友達になれたのは、特別な恵みなんだということがわかっていました。
フォールは晴れやかな顔をガイドに向け、微笑みました。これでやっと家に帰れるのでした。