雑草管理に関連するさまざまな事柄について
2.雑草の制御方法
写真1に示すスクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)は一九八〇年代に食用として海外から導入された南アメリカ原産の巻貝です。
この貝は雑草を食べることから地域によっては稲守貝とも呼ばれていましたが、水管理が雑になると除草効果よりもイネに対する食害が大きなり、今では西南暖地において大きな問題になっています。
これらの方法の他にも、写真2に示すコガタルリハムシという甲虫やザントモナス・キャンペストリスというバクテリアを用いて雑草を制御する方法、さらにはヤギやウシなどの家畜で除草する方法があります。
しかし、コガタルリハムシはギシギシやエゾノギシギシなどのギシギシ類しか食べませんし、ザントモナス・キャンペストリスもイネ科イチゴツナギ属のスズメノカタビラにしか効きません。特定の雑草にしか効かないことは場合によっては重宝されることもありますが、多種類の雑草が生えている場所には不向きな方法です。
ヤギは戦後の食糧難の時代に農山村で普通に飼われていた家畜で、一九五〇年代には全国で七〇万頭弱が飼育されていました。ウシよりも粗食に耐えてササ、クズ、イタドリから有棘植物のハリエニシダやニセアカシアまで選り好みをせず何でも食べます。その上、高所を怖がらないことから急峻な地形に適しており、しかも小型で軽量なため土壌を崩壊させない利点もあります。
また、ヤギ乳は牛乳よりも成分的にヒトの母乳に近く、牛乳にアレルギーを示す人も飲むことができ、ヤギ乳から作られるチーズはシェーブルチーズ(Goat milk cheese)として有名です。
ウシについても、京都府や山口県などでウシの貸出制度(レンタカウ制度)が実際に運用されています。ウシやヤギを用いた除草では、餌の不足する冬期間の飼養が問題になりますが、乳の利用などを考慮すれば過疎地に合った雑草制御方法かも知れません。
以上のように、生物防除は生態系に配慮した手法のように思われがちですが、場合によっては米糠除草やアイガモ除草のように河川の富栄養化を助長する危険性があることから、導入に先立って環境への影響について十分に理解しておく必要があります。