省エネ効果? ガラスの城
ロンドンのロイズビルで名高いリチャード・ロジャース設計の「集合住宅とオフィス」は統一感がある「ダイムラー・シティ」の建築群の中ではダントツのハイテク仕様で、二〇世紀が夢見た未来建築である。わが国を代表して磯崎新のパブリック性の強い堂々たる作品もあり誇りに思った。きりがないので東西融合の象徴と言えるポツダム広場再開発紹介はこの辺りでやめるが、この再開発がスムースに進行できたのは、既設の建物が全くなかったからであり、その意味では新開発の名がふさわしいかもしれぬ(淵上正幸『ヨーロッパ建築案内2』)。
ポツダム広場の建築を総体的に眺めると、ガラスの壁面が非常に多くソニー・センターは特にその傾向が強くて、設計者ヤーンの得意とする素材ともいえるが、全体的にベルリンの新建築はガラスが多い。なぜこのことにこだわるかというと、日本ではオイルショック後、夏季の冷房負荷が熱透過率の高いガラス壁面により増大し、省エネの敵とさえいわれた。ガラス壁面を設計する人は国賊扱いともいえる罵声を浴びた。
一方、ベルリンのような北方で冬が寒い地方では、考えが逆だった。冬季に太陽熱をガラス越しに透過させることは暖房負荷を減らす最高の省エネ手法だったのであろう。このように建築様式は風土によって大いに影響される。かくてソニー・センターはガラスの城になったのである。
午後は建築士の次男から写真を頼まれていたので、U2からU6へ乗り換えて南へ二つ目の駅で降り、「ユダヤ博物館」へ入った(一〇ユーロ)。
入館時に今まで経験しない厳しいボディチェックがあったが、私の前の白人の若者は靴を脱がされ、遂にベルトまではずされた。私も覚悟してゲートをくぐった結果、バックルだけが鳴った。ところが検査員はニヤッとしただけで通過させてくれた。
要するに日本人は頑固なユダヤ人にも信用されているのである。過去に差別されていた彼らが、これでは逆差別だと感じたが、まず好運で良かった。私が日本人だとどうして判ったか。それはなんといっても向こうは鍛えられた審査のプロである。例えば日本人と韓国人とイスラム系中国人の区別など一目で判るはずである。