次はコイによる雑草制御です。コイは戦前まで農村の貴重なタンパク源として水田で養殖されており、養鯉の盛んな長野県佐久地方には、今でもわずかながら養魚水田が残されています。コイの食性は成長とともに変化し、稚コイは雑食性ですが成魚は草食性で雑草も食べます。コイによる除草の原理は採食と泳ぎ回ることによって泥が舞い上がり、その泥が雑草を覆って生育を抑えることにあります。

一方、コイによる雑草制御にもいくつかの問題があります。サギ類による捕食と水田を常時、湛水状態に維持しておかなければならないことです。サギ類による被害は生育の進んだ幼魚を放流することにより解決できますが、そのためには水深をコイの体高よりも深くするために畦畔をかさ上げする必要があります。

ところがコシヒカリ栽培では、イネミズゾウムシの防やイネの根に酸素を供給する目的で水田を乾かす間断湛(かんだんたん)(すい)(なか)()しという操作が行われることから、常時湛水ができなくなり、この意味においてもコイによる除草は今や完全に時代遅れの技術になってしまったといえます。