フォールは至福の思いで目が覚めました。カラスがあんなにも自分を信頼してくれるなんて……「カラスたちも、友達になりたかったんだ」と彼は思い、嬉しくなりました。
「何て名前を付けたんだっけ? すごく特別で大切な名前にしたんだけど」
ところが、いくら思い出そうと思っても、思い出せないのでした。
「どうしちゃったんだろう! 絶対思い出せると思っていたのに」
でも、そんなことよりも、この至福の瞬間の方が大事でした。彼は二つの夢のシンボルが何を表しているのかを、もう一度深く考えてみました。すると、どこからともなく、天使のささやくような声が頭に響いて来ました。ひとりではなかったのです。
「エムさまだ!」
そう思うと、心が喜びに踊りました。守護の天使エマニュエルは、いつもそばにいてくれて、思いもよらぬ方法で助けてくれるのでした。
「そうだ、わたしだよ、フォール」
その声は歌うように答えました。
「本当によくやったね。お前は飛ぶことを選んだ。つくられた恐れという限界を超えて、お前が人生で何度もこしらえてきた鉄壁の城から、牢獄から、飛び出したのだ」
天使が言葉を繋ぐ間に、フォールはため息混じりにつぶやきました。
「エムさま! 来てくれて、ありがとう!」
すると天使は答えました。
「フォール、お礼を言うのはわたしの方だよ。お前は信じることを選び、ジャンプした。霊は招かれたと分かったのだ。霊は、招かれるのが好きなのだ。そのことを覚えておおき、フォール。霊は招かれるのが好きだということをね。霊は喜び、その喜びを表すために、神聖なカラスの姿をとってお前のもとを訪れたのだ。神秘の目を、すべてを見通す目、明晰な目を、お前へのギフトとして携えてね。その目が、お前のこれからの旅には必要になる
」天使は少し間を置いて、続けました。
「その目は、形而下の世界と形而上の世界を繋ぐ道を、お前の直観力と自分自身の中の高次の存在とを繋げる橋を照らしてくれる光だ。鉄壁の城の限界を超え、日常の世界を超えて、その先を見通す明晰さを与えてくれる神秘の目なのだ」