検査と隔離を徹底できれば市中には陰性の人々だけが残るため社会的距離を取らなくても普通に生活できる

約1か月半続いた緊急事態宣言が、2020年5月25日に全て解除された。安倍前首相は「新しい生活様式の確立に向けて国民と政府が一体になって取り組む」と決意を表明した。しかし、少し待って欲しい。本当にこの方法しかないのだろうか。

今回の新型コロナウイルスは、無症状の感染者が市中に残るため、「ウイルスと共存できるような行動様式の変容が求められる」と、感染症の専門家は強調する。確かにそうだろう。今まで人類が撲滅できた感染症は、世界保健機関(WHO)が1980年に宣言した天然痘だけである。

驚くべきことに、2003年に流行し、WHOが封じ込め宣言をしたSARSについても、人類は未だワクチンの開発に成功していない。撲滅するには、開発途上国も含めて全世界の人々が悉くワクチン接種を受けられるよう、手頃な価格で十分な量のワクチンが用意される必要がある。

この状態に至るまでは、市中に一定程度の感染者がいることを前提に、行動様式を変容させ、常に感染防止策を講じつつ注意深く経済活動を再開させるしかないように見える。短期的にはこの方法しかないだろう。でも、長期的には他の選択肢はないのだろうか。

実は、他にも選択肢はあるのだ。社会的な距離の確保を心掛けず、遠慮なくスキンシップを図ることができるやり方が。ある条件が満たされれば、新型コロナウイルス感染拡大の前の行動様式に戻れるのだ。その条件とは「検査と隔離の徹底」である。

少し前までは、発症した人が保健所内に設置される「帰国者・接触者相談センター」に連絡し、そこから紹介されて初めてPCRなどの検査を受けることができた。検査の結果陽性と判明したら、症状の重さにより、初等・中等・重症と分類され、初等はホテルなどの施設で待機、中等以上は入院になる。

しかし、この方法は発症した個人への対応としては妥当であっても、正常な社会経済活動を回していくための対応としては不適切と言わざるを得ない。なぜなら、感染者が市中に潜んでいることを前提にする以上、感染者から一定の距離を保ち、飛沫感染を防ぐ措置が必要になり、永遠に感染拡大の前の水準には社会経済活動は戻らないからだ。