新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で経済活動を軌道に乗せるには政府が透明性のある統計情報を提供することが不可欠だ

さて、世界的に新型コロナウイルスの感染が拡大する中、一躍注目を浴びている本がある。それは、1948年生まれのスウェーデンの医師、ハンス・ロスリング氏が書いた『ファクトフルネス(Factfulness)』という本だ。

日本語版が2019年1月11日に日経BP社から発売されてから、既に50万部を突破し2019年のベストセラー第1位になっている。著者がこの本の中で一貫して強調しているのが、「数字を基に世界を正しく見る習慣を身に付ける」ということだ。

人間が陥りやすい10の思い込みを挙げ、読者に警鐘を鳴らしている。とりわけ衝撃的なのが、「世界は分断されている」という思い込みを一刀両断している第1章だ。

公衆衛生を専門とするロスリング氏は、1995年10月に行った授業で、国連児童基金(ユニセフ)の資料にある乳幼児死亡率の推移に興奮を覚えた。1960年から1993年にかけての乳幼児死亡率の改善状況についてサウジアラビアとスウェーデンを比較したところ、スウェーデンが77年かけて到達した水準にサウジアラビアは33年で到達していた。生徒達が暗黙の前提としていた「欧米諸国はその他の国々より優れている」という見方は思い込みに過ぎず、事実に反していたのだ。

皆さん、思い込みで必要以上に新型コロナウイルスを怖がり怯えることは止めましょう。統計の前提条件を疑う健全な批判的精神を持ちつつ、自分で考え判断し勇気を持って日々を積極的にデザインするのです。

ドイツのように医療崩壊を防ぐことができれば、集団感染を注意深く誘導する政策を取ることも可能です。感染拡大のメカニズムを正確に理解し、地域特性に応じた実効性のある政策を打つことが求められます。

ワクチン接種もしくはウイルス感染のいずれかにより、国民の6割から7割が抗体を持つことができれば、真の意味で新型コロナウイルスとの「共存」が可能になります。つまり、新型インフルエンザのように、予防接種を定期的に打つことで、国民の健康を確保しつつ、経済活動を継続することができます。

その日が訪れうることを期待しつつ、積極的な姿勢で日々の生活をデザインしようではありませんか。