次の二枚の皿は、全員の無言の称賛の視線で迎えられた。一つはアスパラガスのみのシンプルな一品。控えめな焦げ目が付き、うっすらと塩がまぶされている。もう一品は肉厚のパプリカをバルサミコでマリネしたものだ。表皮を黒焦げにして、柔らかな果肉のみにしている。赤、黄色、オレンジの対比が鮮やかで、添えられたイタリアンパセリが輝いている。肝心のバルちゃんは、微笑とともにキッチンに引っ込んでしまうのだが。

ヒロさんは、手づかみでアスパラを頭からかじっている。確かに、その食べ方は美味しそうだ。

「カプレーゼ、です」

オリーブオイルを下敷きにして、トマトとモツァレラチーズが、本当に繊細な厚さに切り分けられて並んでいる。中心に、多めにあしらわれたスウィートバジルがあって、佑子はこのひと皿を見て、微笑み、というのはこういうことなんだ、と思った。

「お好みもあるので、塩胡椒は各自でお願いしますね」

バルちゃんは、沖縄の海塩と黒胡椒のスクイーズボトルを添えていく。

「ねぇ、一緒に食べようよ」

少し気づかわしげに、恵さんが声をかけると、バルちゃんは振り向きながら、例えようもないような優しい笑みをもらすのだ。