麻薬探知犬試験の合否結果は…

いよいよ試験の日がやってきた。試験官(しけんかん)たちが見ている前で、ソフィアとへロイーナは日ごろの訓練どおり、きびきびと動いた。いくつかの試験が終わり最後は、たくさん並んだスーツケースの中にかくした麻薬を見つける試験だ。ソフィアは、すべてのスーツケースをかげるように、へロイーナをリードした。しかし、ていねいにやりすぎて時間がかかっても失格だ。タッタッタ。へロイーナの足音が静かな試験場にひびいた。

どうも、ソフィアはあせって早くリードしすぎたようだ。並べられたスーツケースをほとんどかぎ終わっているのに、へロイーナはまだ見つけられない。残りはあと二個だけだ。

(ダメだ。失敗だ)

ソフィアがそう思いかけたとき、へロイーナは最後のスーツケースから、マリファナのにおいをかいだ。へロイーナはそのスーツケースを猛烈(もうれつ)にがりがりひっかいて中のものを出そうとした。すぐにソフィアがへロイーナの鼻先をかすめてダミーをポーンと投げた。へロイーナは突進(とっしん)してダミーをくわえると、目を輝かせてソフィアを見た。

じゅうぶんに遊んでもらい、満足(まんぞく)したへロイーナはダミーをしっかりくわえたまま、試験場を出ていった。合格だ。試験官たちもほっとしたような顔をしている。

「おめでとう、オリバレス君」

所長がソフィアの肩をポンとたたいた。へロイーナは、所長の手で麻薬探知犬の(しるし)のついたチェーンを首にかけてもらった。ソフィアは、そのチェーンにへロイーナの銀のメダルをしっかりと付けた。

へロイーナが麻薬探知犬になったというニュースは世界中に伝わった。へロイーナほど、麻薬探知犬にふさわしい犬がいるだろうか。ニュースを知った人たちからのお祝いの手紙が、続々と訓練所に届いた。こうして麻薬探知犬へロイーナが誕生したのだった。