「さて、ここに蓮台嬢を皆さんにご紹介したのには訳があります。インドではある日本人僧侶の超人的な働きで不可触賎民を中心に仏教徒が急激に増加しつつあります。その僧侶の名を知る人も増えてきてはいますが、この席では明かしません。私の映画『マルト神群』にもその影響を無視できない形で表れています。そのことを私に諭したのが何を隠そう蓮台嬢でした。
その蓮台嬢と婆須槃頭君とは奇しき因縁で繋がりを持っています。この席に彼、婆須槃頭君を呼び出すのはいささか気が引けるのですが、彼は笹野さんにどうしても話さなければならないことがある、といってすでにここに来ています」といって涯は同意を求めるかのように笹野に目を凝らした。
笹野と内山は、やはりそうなっていくかと頷き合った。ハマーシュタインはいつしか笑みを浮かべていた。ハービク所長はいよいよ真打ち登場でもあるかのように身構えだした。