雑草の起源
雑草の定義のところで述べたように、農耕地に生育する雑草の中には高山植物を祖先にするものもいますが、もともと作物として栽培されていた植物が逃げ出して再び雑草化したものもいます。
ナタネ、コンフリー、ナガミヒナゲシ、ナギナタガヤなどは本来、作物、園芸種あるいは牧草として栽培されていたものが意図的に放棄されたか、あるいは自然に逃げ出して雑草化した植物で逸脱雑草(escaped weed)と呼ばれています。
ハルガヤも元は明治期にヨーロッパから日本に導入された牧草でしたが、収量が低いために放棄され、今では関東以北の道路、河川、空き地で雑草化しています。ハルガヤはバルザックの「谷間の百合」に出てくるイネ科植物で、英名のSweet vernalgrassはクマリンという物質を含み桜餅のような芳醇な香りがすることから名付けられました。
ハルガヤ種子には長短二本の芒がついており、短い芒を支点にして長い芒が土壌水分に反応して伸縮し、蚤のように飛び跳ねます。なぜ、種子が土壌水分に応じて動き回るのか、その理由はよく分かっていませんが、種子が不規則な動きによって窪地や隙間などの種子の発芽に好適な環境を探しているのではないかという説もあります。
カラスムギの種子にも芒があり、水分を感じて運動します。芒がハルガヤよりも大きく、簡単な湿度計を作ることができます。ちなみに、ススキとオギはとても似ていますが、ススキが乾燥した場所を好むのに対してオギは湿った場所を好むというような生育場所の違いの他に、ススキの種子にはオギと異なり明瞭な芒がついています。ススキの漢名に芒が当てられているのもこの理由からです。