決定的な瞬間
「大した変りようじゃないか!」至高の神のとどろくような声が響いてきました。
「フォール、どうしてそうなったのかね?」フォールは一瞬ドキッとしましたが、いつものことなので、落ち着いて答えました。
「実は、自分でもわからないんです、至高の神さま。ただそうなっちゃったんです。本当はもっとちゃんとした、気の利いた答えが言えるといいんですが、本当にそれだけなんです。わかったことは、恐れを感じたら、一歩引いて距離をとって、客観的に観察することだと、……そう言えば、前にも言われましたよね」
フォールは、ちょっと恥ずかしくなり、言い淀みましたが、きまり悪そうに言葉を続けました。「神さまは、もっと客観的になりなさい、あわれみに委ねなさいとおっしゃったことがあります。今なら、その意味がわかります。ぼくは何度も、その都度言われないとわからないみたいです。ごめんなさい……本当にごめんなさい……ぼくは出来のいい生徒じゃないですよね……」
至高の神は、これに対しては何も言わなかったので、フォールは、ただ小声でつぶやきました。
「それに、心配したって、どうせ状況は変わらないんだから、心配するだけ無駄だってことを夢は教えてくれました。でも一方で、ぶっちゃけた話ですけど、夢の中では『わかった』と思っても、また恐ろしい経験をしたら、きっとまた怖くなると思うんです。ぼくはこのことを決して軽い気持ちで言っているわけじゃないし、不名誉なことだということもわかっています。でも、至高の神さま、ぼくは英雄なんかじゃないんです。
だけど、この体験を通して、自分の中で何かが『変わった』こともわかっています。