ペルガモン博物館など

Sバーンのフリードリヒ通りで降りて南下し、ウンター・デン・リンデン通りを少し東へ行くとシュプレー川の支流に出会う。対岸を博物館の島と言う。名高いペルガモン博物館はここにある。一九三〇年に完成した世界三大博物館の一つとされたここも、東独支配下にあった頃は見学が難しかった。

入館すると、いきなり神殿がそのまま再現されている部屋に驚嘆する。これは小アジアのヘレニズム文化の精華であるペルガモン神殿の一部、ゼウスの大神殿である。

プロイセンの第二帝国時代にすでにこの文化財の搬入、再建造が始まっていて、竣工したのはワイマール共和国時代である。当時の新興ドイツの勢いを見せた途方もないプロジェクトである。

巨大な石段と、それを囲むコの字型の神殿のバランスが実に良く、ギリシャ文明特有の平衡感覚が目を楽しませる。その他、古代バビロニアやミトレスの大門、古代ギリシャの城壁なども良い。ここもベルリン観光必見の場所といえる。

ドイツ人の最も愛する木、リンデン(シナノキ科の菩提樹)。そのリンデン通りの南側はホーエンツォレルン家時代(第二帝国)の王宮の場所であり、実際にベルリン発祥の地でもあるのだが、今は破壊されつくされて跡形もない。しかし、ここに外観を黄色いビニールの布にそっくり描き、鉄パイプの骨組みをぐるりと覆っていわば「張り子の王宮」が建っている。ベルリン市民は良き王政の時代を懐かしんでいるのだろうか。

ここから東に歩を進めると、マリエン教会の尖塔があり、今でも使っている「赤の市庁舎」等がある。その先に展望台までの高さ二〇三メートルのテレビ塔があり、早速登ったがなかなかの絶景であり、東ドイツ方面の眺めが珍しかった(ここからポーランド国境まで僅か五〇キロ)。

帰途、下へ降りたら、ばったり前日ポツダムで一緒だったデュッセルドルフの夫婦に会い、ベルリンの景色はどうだったというので、家内が、結構でしたが東独製のエレベーターはちょっと怖かったと答えた。ここまでで、東ドイツの話だけまとめて一応終える。