四月の山
見上げれば全山若緑
美しき生命のまっただ中に
我一人分け入るなり
谷川のせせらぎ静かにて
小さき白き花、そして
黄色き山吹の花咲いており
鶯良き声で鳴き交わし
名も知らぬ黒き鳥も
さわやかに鳴き交わし
春の山は今、若き生命
の謳歌に色取られ
静かに動きいるなり
突然に若木のままに
枯れたる木現れ
我が楽しまぬ心を
写すがごとく現れ
あの女のつかまえられぬ
心に苦しむごとく現れ
何をもて心の證とせむか
若き葉のつややかに光るを
見るとはなしにながめ、
鳴き交わす鳥の声を空ろに
そしてさびしく聞き
暗き心もて春は過ぎ行く