【関連記事】「病院に行って!」背中の激痛と大量の汗…驚愕の診断結果は


ディープな手仕事の復権

日本の歴史をたどれば、古典文学や、能や歌舞伎などの芸能、和算や測量技術等、独自性に富む先進的な文化を築いてきたことがわかる。

また、現代日本では、漫画、映画、イラスト、アニメ、ゆるキャラ、ご当地アイドル、B級グルメ等のサブカルチャーが隆盛している。これからは、受け手側にも素養・教養が求められるハイカルチャーも一層重要になるのではないか。日本のものづくり、たとえば陶器、木工品、漆製品、染め物、刃物、楽器、黒毛和牛、日本酒等は海外でも高い評価を受けている。

BI(ベーシックインカム)は、中間層にとっては、付加価値が高く品質のよい製品の購入に寄与する。希少であることによって、ブランドものを生み出すのは、AIやロボットが生産することができない手仕事である。熟練した手仕事は、精密機械よりも高い精度を出すことができる。

たとえば、職人が手掛けた靴は、使えば使うほど履き心地がよくなるという。手仕事は、モノの生産と消費であるとともに、コトの生産と消費でもある。

さらにフェース・トゥー・フェースの方向に誘導することで、美容師等のサービス業、職人仕事に支えられている中小・零細企業や地産地消の農業等は、より安定的な役割を担うことができる。全国には伝統工芸とされるものが約1300種類ほどあり、いずれも卓越した技術を持つ職人が生産している。

その伝統工芸品の中でも、(1)主として日常生活で使われるもの、(2)製造過程の主要部分が手づくり、(3)伝統的技術または技法によって製造、(4)伝統的に使用されてきた原材料、(5)一定の地域で産地を形成、という法的要件を満たし、経済産業大臣が「伝統的工芸品」として指定する代表的な工芸品は、2019年11月現在、全国に235品目あり、2011年時点での認定登録伝統工芸士数は4441名(うち女性は569名)である。

しかしながら、1979年には従事者数28万8000人、企業数3万4043であった伝産業界でも、2016年では従事者数6万2960人、企業数1万3567(2012年)にまで減少しており、生産額も5400億円(1983年)だったものが、960億円となってしまった。

それでも、技能者の地位や技術水準の向上等を目的に創設された「現代の名工」は、1967年から2020年までに計6646人が表彰されている。