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起業の応援
ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌスが、バングラデシュで1983年に創設したグラミン銀行は、貧困や生活困窮の状態にある人々に低利・無担保で少額の融資(マイクロファイナンス)を行う機関であり、起業や就労によって貧困や生活困窮から脱却し自立するのを支援する。伝統的な銀行システムから排除された田舎の貧しい何百万人の農民が、必要な生産設備を整え、生産性を高められるようにしたのである。
これと同じように、BIで生活費を賄うことによって他の収入で得た現金を貯めれば、小規模に起業する資金を自力で賄うことも可能である。この場合、毎年BIが給付されるので、たとえ起業に失敗してもまた努力すれば自力で再び資金を貯めることも可能になる。
これと合わせて、地域に根差した身近な地銀や信用金庫・信用組合が融資して、地元企業やNPOを資金面で支援すれば、まちおこし、災害からの復興、フェアトレードへの貢献等も拡大することが可能となる。
さらに、2020年には、国会の全会派の一致のもと議員立法で「労働者協同組合法」が成立した。この法律は、働く人が自ら出資し、運営にも携わることができる仕組みを設けたものであるが、BIがあればこの「労働者協同組合」にも参加しやすくなる。
また、BIはセーフティネットとしての役割もあるから、フリーランスになろうと十分な準備をしたのに踏み切れない人の背中を押す効果もあるだろう。
Uターン、Jターン、Iターンの後押し
「田園回帰」の動きが少しずつ広がっているが、Uターン、Jターン、Iターン等の移住を検討する人々が最も懸念するのは移住先での職探しである。
BIはこの不安を大きく減らすことができる。住まいの問題がクリアされるなら、東京で生活するのは困難でも、地方ではBIだけでもなんとか生活していける可能性がある。
特定非営利活動法人地球緑化センターが運営する「緑のふるさと協力隊」で隊員に支給される生活費は毎月5万円である。農業や漁業に携わる人が身近にいる地方への移住は、物価の高い都市部よりも生活費が少なくて済む。農作物の自給、あるいはご近所からのおすそ分け等によって、実質的な生活水準がより高くなることも移住を後押しする。
大都市における満員電車と過密なオフィス環境は、現在問題となっている「密閉」「密集」「密接」の「三密」そのものの生活スタイルであり、天災、感染症、テロ等の危機時のダメージが大きい。
これに対し、地方には人口減少で安い土地がふんだんにある。しかも、新幹線の延伸、空港網、高速道路網及び高速バス網によって、地方は以前より格段に便利になっている。地方の現状は、賃金水準が低いとしても、住居費、生活費は安く通勤時間も短い。
したがって、新しいデジタル技術で生産性革命を実現し、賃金水準を押し上げられれば、大都市よりも豊かな生活圏をつくり出せる可能性がある。