メキシコ国境警察 PART15

2020年7月

メキシコ国境警察への支払いが全完了するまでの期間は長かった。

2019年10月初めから移民局への支払いが始まり、そしてメキシコ国境警察への支払いが完了したのは2020年7月。

事が上手く運んでいたら2019年末には全ての支払いは完了していたはず。

でもメキシコ国境警察への支払い期間はコロナ拡大のピークだった。そんな中Companyから連絡がきた。

コロナのせいで配達が難しい。今はお金を送らなくていい。時期が来たらまたフロンベルクにメールで知らせる、との事。

これでしばらくは送金の為に時間を費やす事がなくなった。

そのお陰で自分のために費やす時間が出来た。

送金中はCompanyからの指示どおり、いろいろな手段で送金した。

UPS、USPS、Walmart、Money Gramoffice。

ロサンゼルスは広い。送金手段が変わる度に、インターネットで調べて家から近い取扱所を探した。

行く時はUber、電車、バスのいずれかで。送金先に連絡出来なくて、配送が届いているのか確認できない時も多々あった。

その度、荷物を送った取扱所に荷物の配達状況を聞くため足を運んだ。

ウイルソンと知り合ってからは自分の為に時間を費やす事はなかった。

イベントの練習にも行かなかった。

それに代わるわたしの満足感と言えば、ウイルソンとLINEで話が出来ること。

いつも彼はわたしと一緒。ウイルソンとのLINEは日課。

ウイルソンは住まいを相変わらず転々としている。安ホテルから通常値段のホテルまで。

シリアを出てからのウイルソンは無一文。

アメリカ大使館にも行けない状況の中にいる。

平穏な日常の中で生きているとは言えない。わたしは彼が必要な食費、ホテル費用、彼が病気になった時の治療費の保証金、薬代、交通費など振り込み続けている。

ある時1ヶ月間くらいウイルソンからお金の催促がなかった。今彼は通常料金のホテルに宿泊してるはずなのに。

わたしにすれば彼への負担が少なくなってありがたいけれど、ひょっとして……?

思ったとおり。

ウイルソンはヨウコからも助けられてる。ウイルソンが言うには、テルヨに恐縮してた、テルヨの負担を少し減らそうと。

それでヨウコにホテル代を振り込んでもらっている。ヨウコも今もなおウイルソンを追いかけ回している。

ウイルソンを自分の手にすることがヨウコの狙い。ウイルソンへの執着はLINEをとおしての彼の話からも充分伝わってくる。

相変わらずヨウコから連日メールが来るそう。

ウイルソンの心はヨウコから逃げているのに、結局メールで彼女と繋がっている。

―ウイルソンの立場なら助っ人は必要。相手が誰であっても。

ヨウコは連日メールで、ウイルソンがいるベルリンにこれから行ってもいいかと聞くらしい。当然彼女はウイルソンの宿泊住所を知っている。

ウイルソンはヨウコのメールの返答に、コロナが収まった頃ならいいよ、とはぐらかしているらしい。感染するかもしれないし。

ウイルソンもヨウコの目的を分かっている。何でヨウコはしきりにウイルソンのいる所に行きたいとメールを送るのか

―ふつうに考えれば分かるよね。