【今回のポイント】
(1) 依頼を受けた際、経営者から様々な情報を引き出し、正確な情報を得ること。
(2)企業の実態・実務は正確になされているか把握すること。
(3)違法行為を行っていると分かった時点で手を引くこと。
【気を付けなければならない点】
このような案件の場合、実態が分かった時点で即決が求められる。そうすることによって、その決断がブレないからである。助成金の請求行為は、様々な申請や添付書類を作成し、準備していかなければ、受給することが出来ない。そのため、かなりの慎重さとプレッシャーがかかってくる上、時間のかかる業務である。
それだけに、最終段階まで漕ぎつけると、一安心するものである。そして、完了後には、報酬が待っている。苦労の末の報酬を目前に、瑕疵に気づいてしまった場合、見逃してしまおうと流される可能性がある。
しかし、その決断の先には「会社側に、この事務所は目を瞑ってくれる」という印象をこの先永遠に与えることになるだろう。そして見逃すことは、私文書偽造罪及び詐欺行為、脱法行為という違法行為にあたる。
このような会社とは、付き合わないことが一番である。
しかし、内情が分からない場合もあるため、受託するときに契約書をきちんと取り交わし、契約時点で契約解除事項について説明し、確認の署名を貰っておくことが肝要である。
この案件は、私が駆け出しの頃に受託したため、現在では無いのかもしれないが、当時は二重帳簿という言葉をよく耳にする時代であった。節税対策と言いつつ、脱税を行うために二重帳簿を付けて、在庫資産などをごまかしていたのである。
経営者の審査事項の評点を引き上げるために社会保険に入り、勤務実態の無い技術者を雇用していると見せかけることも行われていたのかもしれない。