バイクと仲間
A高校はけっこう無理して入った高校だったので、初っ端の全校テストは520番中460番だった。
難しいのなんの、ちっともわからなかった。姉が優秀な成績で卒業したせいで、
「姉さんはよくできたのにねー」
と言われる始末。
一学期が終わり、夏休みとなった。特にすることもなくぼけーっと過ごしていたが、8月の頭になって母親が、
「原付バイクの免許取れば?」
なんて言う。
「えっ? 原付バイク? 免許? そんなこと言ってもバイクないじゃん」
「私も乗るから中古の買うよ」
と。早速、原付バイクの免許試験勉強が始まった。
しかし、引っ掛け問題が多く、それなりに頑張ったが一回目の試験は落ちた。
8月16日の2回目の試験で合格し、二俣川試験場で実技講習を受け、晴れて免許取得となった。とても嬉しかった。
さて肝心のバイクだが、近所のバイク屋さんで中古のジョグを買った。母も買い物用で乗るわけだから籠付き。格好悪いなーと思いつつも乗り回す。これがまた楽しいんだよね。一日中乗っていたよ、ほんとに。
道路交通法なんて糞食らえ状態は言いすぎかもしれないけれど、若気の至りで多少はアレな感じだった。
いまと違ってそんなに厳しくなかったからなんて言い訳しつつ。よく転んだりもして、痛かったな。そのうち悪い友だちが籠を取っちゃって、母に怒られたことも。
その後5年間、僕の愛車として大活躍。いつも一緒、どこでもこれで行っていた。勉強なんかそっちのけだった。
そんな"青春真っ只中"の高校1年の冬に、僕はお腹を壊した。
あまり痛いわけではなく、ただただ下す。さらに食べ物を受け付けなくなって、1ヵ月で10キログラムは痩せてしまった。
お腹はペタンコ、顔も細っそりして、最終的には53キログラムになっていた。制服もつくり直し、ズボンも買い直し。私服も全部買い替えた。
ただ、痩せたことによってなのか、知らないが友だちが増えた。クラスメイトのK君が、
「名前何てーの?」
と聞くから、
「畑中彰吾だよ」
と言ったら、
「ああ、じゃあ、ハタショウね?」
なんて勝手に決めて、
「こいつハタショウって言うんだよ!」
と小集団に語りかける。
「へー、面白いじゃん。こっちにきなよ」
みたいな展開になって、僕も
「へっへ、ハタショウですぅ」
などと言いながらグループのなかに入っていった。そのグループはS君が中心的人物で、5~6人が固まっていて、当時強かったサッカー部のキーパー・Mもいた。Mとはなぜか気が合いよく話をしていた。