そこへ、ニホが口をはさんだ。
「なほ子ちゃん、凄いじゃん! あの、あたしも見てください!」
いつものニホなら、遠巻きに見ているだけであろうに、今日は横から割り込んできた。
「いいよ。何が訊きたい?」
神﨑が、心なしかホッとした表情で訊いた。私と話すのがそんなに嫌なのか?
「あの、あの……」
ニホは少し躊躇いながら、しかしはっきりと
「静真さんとの相性をお願いします!」
と言った。その途端、
「ええ?」
「静真モテるなあ」
「ニホちゃあん、そんな奴より俺との相性を占いなよ」
と、場が一気にどよめいた。
「斎藤さん、あんな大きな声出せるのね」
「いっつも、ボソボソと何言ってるかわかんないのに」
私の後ろで、二人の女子学生が小さい声で囁き合った。
ニホは静真がカードを切るのを、子供のように目を見開いて、じっと見ていた。カードに穴が開きそうである。静真の方は実に涼しい顔で、切ったカードを並べると、
「ああ、うん、まあまあだね」
と言い放った。
「まあまあ?」
ニホは不服そうだ。
「特に悪いところは見当たらないし、長く一緒にいれば、恋愛感情のようなものが湧く可能性もある」
神﨑は科学実験の結果でも報告するかのように話した。
「静真さん……」
ニホが泣きそうな顔をしている。
「私、相性が悪いって言われた方がマシでした」
「俺はカードを読むだけだよ。他のことは言えない」
ニホは、しばらく黙ってカードを見ていたが、「私、もう帰ります」と言って立ち上がった。
そんなニホを、同情の目で見る者もいれば、
「あれえ、ニホちゃん、帰っちゃうの?」
「ゆっくりしていきなよ~」
と、酒が入った声で、笑いながら声をかける者もいた。ニホはそれらを突っ切るようにして帰って行った。