若手の手本になろうという自覚を持った先輩ならば、若手からの信頼は自然と厚くなり、例えばいわゆる部活(特にシニアが好みそうな「釣り部」など)では部長に祭り上げられて若手との楽しい時間が共有できることになる。シニア会員は、自分の身の置き所、若手から可愛がられるコツを早く体得した方が賢明なのだ。

僕もすでにその年齢層に入っている。一生懸命、若手の会員たちからハジカレないように自省していくつもりだ。

(2)新会員へのフォローが不足していること、ロータリーへの理解浸透(教育)について前向きに取り組んでいないこと

新会員への対応が大切であることはすでに書いた。新会員は、近い将来その周辺の友人たちを連れてきてくれるキーマンであり、その反面、彼らを失う(クラブを辞める)ことはその周辺の新会員ターゲット層を根こそぎ失うことを意味する。彼らが、クラブに居続けることは有意義だと思える環境を作ること(啓蒙と啓発)が大切なのだ。

それには、彼らの紹介者やクラブのシニア会員、会長や幹事の役員たちのバックアップ(フォロー)が必要なのだ。また彼らに対し、単にお客様のようなおもてなしをするのではなく、彼らがロータリーを知り、好きになり、楽しむようになれる教育を提供することが大切なのだ。

それは本来、彼らを迎え入れたクラブが責任を持って取り組むべきことなのだが、それが出来るクラブは少ない。彼らはロータリー知識を得る機会が与えられることなく、ただ例会に出席し、ポツネンと昼メシを食べて帰るだけのロータリー活動になってしまう。これでは続くはずがない。

そこで、地区がクラブの代わりに新会員セミナーを開くことが必要だ。各クラブから新会員を一同に集めてのセミナーは、同時に同水準のロータリー知識を獲得できることも効果的なことだが、彼らのなかに、所属するクラブは違ってもお互いロータリーで頑張ろうとする親近感、仲間意識が共有されることになる。クラブで感じていた彼らの寂しさが解消されるのだ。

また、その講師の人選も大切だ。講師の選び方は、自分の知っていることを「話したい人」よりも、自分の話を「聞かせたい人」を選ぶことだ。「話したい人」は聴衆の耳を傾けさせる工夫をしない。単なる知ったかぶりのおしゃべりだ。

一方、「聞かせたい人」は自分の話を聞いてもらうための工夫をする。話のなかに具体的なエピソードを交えるなどして、聴衆が頭のなかに情景を描けるようなシチュエーションを作り上げる。

最近、商品販売(マーケティング)の世界では、「現代はモノ(物)よりコト(事)が大切な時代だ」と言うが、それはモノ(商品そのものの価値)よりもコト(その商品を購入したことで得られる体験)が重視されるという販売手法をいう。ロータリーでも、コトを重視した話法が重用されるのだ。

総じて、それを話術というのかも知れないが、作家の故・井上ひさし氏が言った「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを面白く」話せる人物が適当だと思われる。どこの地区にも話術に長けた人材がいる。うちの二八四○地区ではクラブからの依頼によりパストガバナーをはじめとする地区役員を派遣し、卓話の出前サービスを提供している。僕にも年に何度かのご用命がかかる。