中一ギャップ
かつて私が公立中学校に勤めていた頃、うちの子の中学受験の模擬テストを受けるために、兵庫県の西ノ宮北口にある塾に行ったことがあります。
朝一番から黙々と鉛筆を走らせるすごい音と熱気に包まれた小学六年生の教室。勉強会場からテスト会場に拍手で送り出すあのテレビで有名なセレモニーに参加しながら、「ここまでしなくてもなあ」とやり過ぎ感を感じる反面、ここまでしている子たちと、今同じ時間をゲームで遊び呆けて過ごしている子たちと、学力や将来に差が出ないほうが不公平だと妙に納得したものです。
私立派は、こうしたことも受け入れ、ひたすら希望する未来を目指しているのです。公立派であれ、私立派であれ、お母さん方にお勧めするのは、小学四年生か五年生の時には、中学校をどうするか、一考することです。六年生になってから考え始めたのでは、遅いように思います。選択肢を考えたり、実際に選択できる力をつけたりする時間が必要だからです。
さて、中学校にはいくつかの小学校から子どもたちが集まります。高い確率でどこかの小学校では学級崩壊を経験しているので、入学時点では荒れが前提になっています。個人的に見ると、「小学校の先生」は、一人一人優秀です。ですが、なぜか「小学校」はそうとは言えません。
以前、公立中学校在職中、新入生の入学時テストでかけ算の九九ができていない子が十七%いたと、小学校との研修会でお話ししたことがあります。ところが、まるで学力に関心がないような返答が返ってきたので、「ああ、小学校って、こんな感じなんだ」と思いました。十七%というと、二百人規模の学校で三十四人。約一クラス分の生徒がかけ算の九九が十分にはできないわけです。
この現実をどう思われるでしょうか。まあ、小学校は子どもたちを卒業させればいいだけですから、そうなってしまうのかもしれません。しかし、そこから中学校の勉強を教えるとなると、中学校でも最初がけっこう大変になります。どんなに荒れた子どもたちが入ってきても、学年としては三か月で普通の状態にしますが、「難易度」は年々高くなっていますね。