「だって ユミとかノリコとか 職場にいるアラフォーやアラフィフの独身女性を見てよ

根本的なところで 男に自分という存在を肯定されていないからなのか

不必要な力が そこかしこに入っているでしょ

『私はワガママで 仕事とか趣味とか

自分のやりたいことを とことん追求してしまうタイプだから

誰かと一緒に暮らすなんて向いていない だから一人の方が楽なの』とか言ってさ

仕事でしか 自分という存在を他人から認めてもらう場所がないからか

(この場合の “他人” は “男” という意味に限りなく近いけど)

どこか肩肘張っているし 言葉にも(とげ)があって 競争意識が強くて

仕事の成果を さりげなくアピールしようとするじゃん

同僚のこと あまり褒めようとしないし 感謝もしないよね

こちらから話し掛けるときには 気を遣うし

着ている服の色も 原色が多くてケバいわ

そのくせ自分が褒められると すぐはしゃぐし

こういう人たちは 『君がいなきゃ困る』っていう言葉に とっても弱いしね

結婚して家庭をもっている女性の方が

精神的に依存できるパートナーがいる分 心に余裕があって 背伸びをしていないし 

同僚のこと よく褒めるし すぐに感謝だってできるよね

こちらから話し掛けやすいし 

たとえ『帰りが遅い』だとか 『家事を手伝ってくれない』だとか

旦那の愚痴をこぼしていたとしても 

愚痴の対象すらいない ユミやノリコよりマシだわ

だから 未婚者を“人生の負け犬”と呼ぶことは 

決して根拠のない誹謗中傷とは言い切れないと思うの

……アタシ 結構ひどいこと言っているわね 今日の会話は内緒よ」

「……」(最後まで上手く返答できなかった私)

閉店間際の社員食堂 西日の差し込む窓際のテーブルに腰掛けて

先輩のユミとノリコとコーヒーを一杯

うちの部署では “お局様”的なポジションの一角を占めているユミとノリコ

入社二十三年目の同期 男性優位の職場にあって 部長代理にまで上り詰めた女傑

“おひとりさま”のホンネ インタビューしちゃいました

「私はワガママで 仕事とか趣味とか

自分のやりたいことを とことん追求してしまうタイプだから 

誰かと一緒に暮らすなんて向いていない だから一人の方が楽なの」

「……」(今回も上手く返答できなかった私)

「それにヤスコを見てよ 結婚しているのに 幸せになんか見えないでしょ」