小学生最後の夏
今年は母親の実家がある四国・香川県に遊びに行きたいと僕はねだった。外来の主治医は母にこう言った。
「香川県に大きな病院はありますか?」
意味深な発言だが、そのときに行った検査の結果がかなり悪く、入院させるくらいのものだったのだ。修学旅行の日光曝射の影響だ。だが、それを押してまで香川県さぬき市に行き、1週間、遊びに遊んだ。カブト虫やクワガタなどもとったりして、充実した1週間だった。
帰りの新幹線、僕はとても怠く、そして熱っぽかった。母親に寝てもいいかと聞き膝の上で眠った。寒かったのを覚えている。帰って来たのは8月11日。僕は寝込んでいた。テレビに映し出される映像では、PL学園が甲子園で活躍している。姉が桑田や清原が出るたびに喜んでいる。
翌12日、病院に行ったら緊急入院となった。検査結果が最悪だったようだ。夕方、テレビで日航ジャンボ機墜落事故の様子がずっと流れていたことを覚えている。ベッドの横に母親が座り、おばあちゃんがつくってくれたウナギをおにぎりのなかに入れてこっそりと食べさせてくれた。美味しかった。そのうち熱はどんどん上がり、意識も朧気だった。
ベッドの横に外科の先生が来る。「何で内科の病気なのに外科の先生が?」と思っていたが、あとから聞いたら人工透析するための準備で外科の先生が来ていたそうだ。そんなことはつゆ知らず、ボンヤリと病室の天井を見ていた。