ランチに見るオーストラリア

ランチタイム。持参したランチを食べる生徒たち。ランチボックスには、サンドイッチやくだもの、ジュース、スナック類が入っている。

サンドイッチはハムを挟んだだけ、ピーナッツバターやベジマイト(オーストラリアでよく食べられる発酵食品)を塗っただけの簡単なものが多く、キャラ弁などはない。くだものもオレンジやリンゴなどが丸ごとゴロンと入っている。「うさぎりんご」などまず見ない。スナックは、ビスケットやポテトチップ、シリアルバーなどで、おやつとしても食されている。

家庭でランチを用意できない生徒はキャンティーン(食堂)で買う。登校途中にコンビニなどで買うことはなく、ランチタイムになるとたくさんの生徒がキャンティーンに集まってくる。先生もやって来る。ランチタイムのキャンティーンはすごくにぎやかだ。

ランチはオンラインでの事前注文も増えている。キャンティーンのメニューは豊富だ。手ごろな価格で生徒の好きそうな食べ物が数多く売られている。サンドイッチやハンバーガー、ホットドッグ、パイ、ソーセージロールなど若者向けのものが多い。フィッシュアンドチップスやミートパイなどオーストラリアを感じさせるものも多い。ベジタリアンやハラル(イスラムの教えで食べることを許されているもの)のメニューを提供する学校もある。

ランチは外で食べる。小学生はランチルームで先生や友達と一緒に食べたりもするが、たいていは戸外のベンチや芝生の上など好きなところで食べる。日本と違って教室での飲食は原則禁じられているからだ。

屋外には公園のようにあちこちにベンチが置かれている。歩きながら食べている生徒もいるが、注意する先生はあまりいない。先生の中にも歩きながら食べている人がいる。コンクリートの通路に直に座って食べている生徒もいる。

オーストラリアの若者は、地べたに座ることにあまり抵抗がないのか、そのような光景は街中でもよく目にする。ごみに無頓着の子も多いようだ。リンゴの芯やバナナの皮を平気で投げ捨てている。放課後の鳥たちには最高のごちそうだが、あちこちにごみが散らかっているのはいかがなものかと思う。

ランチの風景を見ながらふと日本の学校給食について考えた。日本では「食育」が重視され、学校給食がその多くを担っている。学校給食は、1954年に制定された「学校給食法」を法的根拠としているという。戦後の欠食児童対策として実施されたそうだが、社会が豊かになった現在も続いている。

近年は家庭の事情から家で十分な食事ができず、給食が頼りという子どもも増えている。時代背景が変わっても、給食には重要な役割がありそうだ。

給食は配膳から会食、片付けに至るまで教育の一環として行われる。白い割烹着を身に着けた子どもたちが配膳する姿は、小学校の日常風景に溶け込んでいる。栄養士がエネルギー量や栄養価、食品の安全性、味付け、生徒の好みなど様々な点を考慮しながらメニューを考え、教師も、衛生指導から配膳のしかた、会食のマナー、望ましい食べ方まで細かく指導する。指導は大変だが、意義は大きいと思う。そして、何といっても給食は美味しい。