夕つ日のほてりまださめぬ山の際に 星くづ輝やくころとなりにし
一ときの看りもなさず死なしめし 妹思へば嘆きはつきず
牛乳さへ喉を通らず十日目に 命つきたる哀れ妹
生涯にわたって詠み続けた心震わすの命の歌。
満州からの引き揚げ、太平洋戦争、広島の原爆……。
厳しいあの時代を生き抜いた著者が
混沌とした世の中で過ごす私たちに伝える魂の叫び。
投下されしは新型爆弾被害不明とのみ声なくひしめく中に聞きをり
伝へ伝へて広島全滅の様知りぬ遮蔽して貨車報告書きゐし
擔架かつぐ者も顔より皮膚が垂れ灼けただれし兵らが貨車に乗り行く
新聞紙の束ひろげてホームに眠る中すでに屍となりしも交る
息あるは皆表情なく横たはり幾日経てなほ煤降るホーム
(本文より)
夕つ日のほてりまださめぬ山の際に 星くづ輝やくころとなりにし
一ときの看りもなさず死なしめし 妹思へば嘆きはつきず
牛乳さへ喉を通らず十日目に 命つきたる哀れ妹