銀座中央通りの街並みの構成美

銀座中央通りの街並みは、最初に全体的な開発計画があって造られたのではなく、夫々の店舗は各々が自由に建設して出来上がったものです。

ですから隣接する建物や近隣の建物との関連や整合性などを考慮して計画したわけではありません。しかし、街並みを観察していると、ビルの並び方、或いはファサードの並べ方に街路の構成美を発見することがあります。

先ず、銀座四丁目の交差点の角に建つ、銀座和光ビルと晴海通りを挟んで向かい側にある三愛ドリームセンタービルの関係です。

和光ビルはネオルネサンス調の重厚なビルですが、角地に面する部分を曲線に変えて丸みをつけています。

他方、三愛ドリームセンタービルは円筒形の建造物で、交差点のコーナーに柔らかい空間を造っています。

次に、三愛ドリームセンタービルと銀座中央通りを挟んで向かい側にあったサッポロ銀座ビル(日産銀座ギャラリーが入居していた)は解体されて、最近、銀座プレイス(平成二十八〈2016〉年竣工)が誕生しました。

外観は白い編み目状の装飾ですが、形態は丸みのある五角形で、遠くからは円筒形の一部のように見えます。和光ビルは昭和初期に建てられましたが、三愛ビルは昭和三十八(1963)年に建てられ、銀座プレイスは平成二十八(2016)年に建てられました。

既存の建物がある近くに新規の建物を建てるときは、施主は既存の建物を意識して調和を図ろうとすることはよくあることです。

後から建てられた二つのビルが、いずれも角の取れた丸みのある建物なのは、偶然ではないでしょう(写真27)。その結果、銀座中央通りと晴海通りが交わる銀座四丁目交差点の角に建つ三つのビルは丸みのあるビルとなりました。

そのお陰で、ここに柔らかでゆとりのある都市空間が生まれました。隣接建物を意識した例としては、既に日比谷公園前の日生劇場があります。

日生劇場の手の込んだ外観は、嘗て隣にあった幾何学的デザインの旧帝国ホテル本館(フランク・ロイド・ライト設計)を意識して造形されたと言われます。

しかし残念ながら旧帝国ホテルは愛知県明治村に移設されてしまい、その跡地には無機質の巨大な帝国ホテルが建ち、折角の日生劇場の外観デザインは一人相撲です。

デパートのような大きなビルは、そのファサードのデザインが単純だったり、のっぺりと平面的となったりして面白みに欠けますが、戸建てビルの集合体には、巧まざる造形美を見出すことがあります。

銀座七丁目にはVACHERON CONSTANTIN、DAMIANI、サエグサ、PANDORAと戸建て店舗が並んでいますが、夫々のビルの様式、色彩、模様、そしてビルの背丈までがバラバラなのに不思議な調和があります。

個性が違う建物が集合体となって、もう一つの新しい造形美を創出しているケースです。これも違った意味で、隣接建物を意識した例と言えるでしょう。