このようなことを書いているうちに、また私の気持ちは迷ってきています。私の死んだことなど、すぐにあの方に知らせてもらう必要などありません。私の気持ちを一度も打ち明けたこともないし、ほのめかすようなことを言ったり、態度に表したこともないわけですから。

あの方は私の死を唐突に知らされ、さらに形見の品を受け取ってくださいなどと言われたら戸惑うばかりでしょう。だから場合によっては何も知らせる必要はないかとも思います。このことについてはお母さんと兄さんのほうで決めてください。

自分でも不思議なことと思うのですが、間もなく私は死んでしまうということははっきりと予感できています。でも死ぬということ、そして死ぬということの意味の確証は何もないのです。

これは私だけのことではなくて、これまで死ぬことになるとはっきりと悟るようなことは誰にもできなかったと思います。死ぬ直前の当事者一人一人がこれまで死ぬとか、死の意味とかに何も確証がないまま、生の世界から死の世界へと入っていくのですから。

本当によく言ったものだと思います。死というものの前では、皆人間は平等なのですね。改めてこのことだけは今の私にもわかります。

そして死そのものだけでなく、死にかかわるもろもろのことでも、私たちはこの世では本当に平等にしてもらっていることがよくわかるのです。生きているのにまもなく死んでしまいますと身勝手に予想して、こんなことを書き連ねてしまって本当にごめんなさい」