認知症のない正常な人の得点の平均は25点、20点以下が認知症という目安になっています。このテストだけでは重症度分類は行わないことになっていますが、15点が中等度の認知症の平均値、10点以下では高度の認知症とほぼ推測できます。

この検査は手軽にできてとても有用なので、私も初めての患者さんで認知症が疑われる方にしばしば行っています。

認知症が次第に進んでくると得点も下がってくるので、症状が進行した場合や書類の作成を頼まれた場合にも行い、ご家族に点数の変化を説明するとわかりやすいと言われます。

アルツハイマー型認知症は、次第に進行する変性疾患なので、1年で平均2〜3点下がると言われています。

また、いつも正確に判断できるかというと、患者本人に協力してもらわなければいけないので、十分な協力が得られない場合には正確な結果が出ないことがあります。

例えば、いくつかの質問に答えられないと腹をたてたり、嫌になって続けられなくなる方がたまにいます。

また、抑うつ傾向の患者さんでは、最初からやる気がなかったり、途中でくじけてしまって黙り込んだりして、低い点数になってしまうことがあります。

逆に認知症の症状はあるのに、この検査の点数は正常範囲内と良く、検査してもらった医師に「正常です」と言われ家族が困惑することもあります。

私が経験した例では、患者さんはメンタルな症状が強い方で、物盗られ妄想が著しく家族の1人を責め続け、度々暴言暴力に発展するということでした。

症状からは明らかに認知症が疑われましたが、知能テストでは正常値で、診察時の態度も良いので、最初に行ったクリニックでは認知症とは判断されなかったのだと思われます。

認知症の診断はこのように判断が難しいこともあるので、認知症の診療に慣れた神経内科や、メンタルな症状が強い場合には心療内科などで相談するとよいと思います。