夏休みの宿題
「お父さんは原先生の気持ちが分かるな。やっぱり身内に臓器が必要な家族がいれば臓器提供を受けたいと考えるのが自然だと思うよ。かといって、例えば家族の誰かが脳死になった時には、脳死状態からの臓器提供をするのはかなり躊躇してしまいそうな気がする。でも、自分自身が脳死になった時には、是非とも臓器を取ってくれ、という感じじゃな」
「お母さんは、お父さんが脳死になった時には、それでも提供に賛成したくないな。だって、まだ体は温かいんでしょ。それなのに死んだことになるって、信じられないわ」
「お母さん自身は、脳死後の臓器提供はどう思う」
「私自身は、臓器を提供することに躊躇はないわ。だって、死んでいるんだもんね」
奥田家では、早速、夕食の後に話題になっていた。
「加奈子たちはどう?」
「私は死ぬっていうことが全然想像できないよ。臓器を取り出すっていうのも怖そうだし」
「僕も想像できないけど、今日の原先生の話を聞くと、自分自身は提供してもいいのかな、って思ったよ」
「孝太は怖くて考えたくないな。無理かもしれない」
「みんなそれぞれ意見が違うのも当たり前か。それじゃあ、家族の誰かが病気になって、臓器移植が必要、脳死した人からの臓器が必要、という状況になったとする。みんなどうする? お父さんはやっぱり臓器提供を受けることを希望すると思うな」
「お母さんも絶対にそう思うわ」
これには家族みんながうなずいた。