ほころび
八月八日(月)
お昼頃、寝室を片付けていたら、見たことのない孝雄名義の通帳を見つけた。中を見て驚いた。記帳されているすべての記録が、晴香さんへの振込だったからだ。最近まで続いている。私は、その通帳の全ページの写真を携帯電話で撮って、元あった場所に戻しておいた。
(てっきり別れたかと思ってたのに……あまりにも人を馬鹿にしている!)
その晩、私は夫の携帯電話で晴香さんのメールアドレスを確認し、翌日、自分の携帯電話から晴香さんにメールを送った。
八月九日(火)
〈私は「たー」の家内です――〉
――今年二月に、あなたがホテルの便箋に私の夫に宛てて書いた手紙を見つけました。その後のメールのやりとりも見せていただいています。
私は、あなたが主人と楽しいことをされていた間、主人の母親を介護していました。それで私は、だんだん大変になっていく介護を晴香さん、あなたに託して実家へ帰ろうと思い、主人にそう伝えたのですが……。
私が大変な時期に楽しい時を過ごされた晴香さん、最近はメールのやりとりがないようなので、もう終わったと思っていたのに……まだ未練があるようなら私にも考えがなくはないです。
私は、あなたを訴えてもいいかと思っています。
〈奥様へ 突然のメール、正直驚きました。そして、大変不快な思いをさせてしまったことを深くお詫び申し上げます――〉
――私は以前、奥様と同じ思いをしたことがあります。少なくとも奥様の気持ちは理解しているつもりです。もし奥様がいることを知っていたなら、奥様を不快にさせるつもりは、私はありませんでした。
私も主人に浮気された時は、深く傷つき悲しみました。今私にできることは、ただただお詫びするしかありませんが、どうか、ご主人を時間がかかっても許し、添い遂げてほしいと私は願っております。
もうご主人とお会いすることはありませんし、連絡を取ることもありません。このメールの内容が、奥様の望むものかはわかりませんが、正直な気持ちを書かせていただきました。
〈晴香さんへ 突然のメールにお返事いただきありがとうございます――〉
――正直、苛立ちが治まらない部分もありますが……。
晴香さんは何歳ですか? 主人は自分を何歳だと言っていましたか? また独身と言っていましたか?
もし私と主人が離婚をしたら……主人と結婚する気はありますか?
もしあるようなら、私からご連絡させていただきましょうか?
〈奥様へ 早速のお返事ありがとうございます――〉
――私は三十六歳です。ご主人の年齢は正直わかりません。
奥様の生活、お察しいたします。介護で苦労されたことについては、本当に頭が上がらない思いですし、そんな大変な時に、本当に奥様に申し訳ないことをしたと胸が張り裂けそうになりました。
私は、奥様が離婚されることを一切望んでおりません。苛立ちもいつか癒えて、ご主人と添い遂げられることを心から望んでいます。ご結婚されたのも縁ですから、どうか大切にしてください。すみませんでした。