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予兆
2010年12月26日(日)
「景子ちゃん…ちょっと心臓が…苦しんやけど…」
夜も更けてきた頃になって、義母が小さな声で、済まなそうに訴えた。
義父が亡くなってから、ずっと大阪で独り暮らしをしていた義母を自宅に引き取り、介護し始めてから10年ほど経つ。いつも私のことを気遣ってくれて、決して無理は言わない人だった。
(お義母さんがこんなん言うなんて、よほどのことやろうな…)
私はすぐに、地元、神奈川県内にある自宅近くの総合病院に電話して、義母を車に乗せて救急外来へと走った。診察室に呼ばれるのを待ちながら、休日出勤したまま、まだ帰宅していなかった夫の孝雄にメールで知らせる…。
結局、義母はそのまま入院することになり、私は孝雄に、
〈お疲れ様です。今日は入院になりました〉
とメールを送り、入院になってもいいように念のため準備をしてきていた荷物を駐車場まで取りに行った。そうこうしていると、いつものように、
〈了解しました。いつもすみません〉
と返信がきた。そのメールを確認し、入院説明を受けて書類をもらい、その日はいったん自宅に帰った。
義母は大阪で独り暮らしをしていた頃から、たびたび体調を崩して入退院を繰り返していた。主治医の先生から「もう独り暮らしは無理ですからね」と釘を刺されていたこともあり、義母は入院するたびに世話をしてくれていた娘のところで暮らすことにした。
孝雄は長男だが、上にもう一人、山田という家へ嫁いだ姉がいる。そうしてお義姉さんのところで生活していた義母が我が家に来ることになったのは、本人たっての希望によるものだった。
山田家は我が家と同様、核家族だというし、介護してもらうなら、息子の嫁の世話になるより、実の娘のほうが気が楽なのではないかと思うのだが、義母が言うには、実際に生活を始めてみると、思っていたような生活ではなかったとのこと。
お義姉さんは、もともと独り暮らしをしていた義母に、以前と同様、気を遣うことなく生活できるようにと、自分たちとは切り離して生活させていたようだ。