首都圏近郊の空き家問題の実態

この問題を放置しておくことも日本経済の崩壊につながりかねないとも思う。

2014年5月日本創成会議が2040年には日本では896の市区町村が消滅可能性都市になるという発表をして話題になった(『地方消滅』増田寛也編著、中公新書)。

今の趨勢(すうせい)から見ると間違いない試算だと思う。問題はそこに行く過程である。

残す自治体と消滅させる自治体を事前に選り分けるという作業を行い、消滅させる自治体の無人化への工程を明確にすることと、消滅後をどういう形にするかのデザインを描くことが必要である。

それを行わないと、消滅した集落の跡は荒れ放題になり、あらたな環境問題や自然災害を起こす源にならないとも限らない。

だからそのようなところに対しては、事前に移住する住民への手厚い支援を行い、跡地を自然に戻すような手を打つべきだ。

夕張市の大夕張地区の斜面にあった炭鉱住宅跡はすっかり見事な森林になっていて、ここに住宅街があったとはとても思えないような自然復旧ぶりだった。

だからもしも、今自然災害危険地域に住んでいる人々にこれらの空き家に移り住んでもらうことができれば、スカスカの状況が変わってくるだろう。

もちろんそれらの人たちが希望する移転先の条件と、実際の空き家の条件とが完全に一致するとは限らない。

しかし移転せざるを得ないような状況になれば、そう何もかも希望通りには行かず、ある程度の我慢はしてもらわないとならないだろう。

消滅する自治体の数が896かどうかはともかく、このなかには全域が自然災害危険地帯でありそれを理由に自治体を閉鎖するところもあるだろう。

江東5区はまさにそのようなケースとして筆者は提案するものである。

逆に、首都圏近郊の自治体などで、自然災害危険地域からの人を呼び込むことによって街が復活し、新たな発展に向かうところも出てくるだろう。

空き家問題はどこの自治体でもその重要性を自覚し解決のための施策を打っているが、今やっていることは、空き家となっている建物1軒ずつを住民のコミュニティの場所にするなど有効活用しようとする施策がほとんどである。

もちろんこれもやらないよりはやった方が良いことだが、空き家問題は今や1軒ずつ丁寧にやって行くには数が多すぎる。

たくさんの空き家をまとめて解消するような施策が必要である。