私は、死ぬかと思った。

何が起きたか分からない。ほんとに一瞬の出来事であった。強烈な勢いで「ゲボ……」リビングに嘔吐。胃の中にある物が一気に噴き出した。そして、シャワーのような汗。

突然、目の前が真っ白になり頭の中のすべての細胞が錐もみ状態で回り出し、額からは、滝のような汗が吹き出し、頭が割れるように痛い。気持ちが悪く、人間死ぬときは、こんなもんだと思った。

目が、激流の渦のように早く回る……。目が回っているのか、自分が回っているのか訳が分からない。ただただ猛烈に気持ちが悪い。ソファー、机が飛んでいく。熱い。猛烈に熱い……。

「母さん、水を……水を早く」

断末魔の唸るような怒声で訴えた。妻は、慌てて、コップで水を持ってきた。私は、苦痛でのた打ち回っている。ソファーをなぎ倒し必死で意識が遠ざかることを我慢していた。

「バケツで水を頭から……」と辛うじて言ったことまでは、覚えていた。

妻は、後日、リビングは水浸し、ソファーや椅子は散乱し整理するにもソファーは重いし大変だったと私にこぼしていた。私は、前から心臓に爆弾を抱えている身の上、妻は、当初、心臓発作かと思い、準備していたとおり、救急車を呼び、対応を急いだ。

落命は、時間との勝負であることを知っていた。私は、水をかけられた時から意識がなかった。