147人の種男の中で、最も人気のある男が種男105番だ。種男105番は、あえて、抽選で当たった女を蹴って一般公募の女を選ぶことを良しとする男だった。この種男の魅力はなんと言っても優しさだった。男のいない世界で生きている女たちにとって特別になれる瞬間はまさに、男といる瞬間であり、そして男に優しくされること。
重い物を運ぼうとすれば持ってやり、ドアを開け、椅子を腰掛けやすいように引いてあげるといった300年前には当たり前に行われていた男と女の自然な動きを体験させてくれる。
種男105番と過ごした女たちはそのたった3日間の経験を拠りどころとして生きていくことになる。
この男を知らないほうが幸せだったと言い出す女も数多く、この男と過ごし妊娠する女の確率は他の種男たちより高い。
医学の進歩で、この種男たちの貸し出し中には精子はコントロールできるようになっている。貸し出し期間中に種男たちは全員ポポリタンドリンクという液体を飲む。これを飲むと彼らの精子が卵子と合体した際、女の子しか生まれないようになっている。
もちろん、この事実は、国のほんの一握りの要職に就く者たちしか知らない。
種男たちにも、休暇が存在するが、その休暇中の行動は全て記録されモニターチェックもされている。休暇を過ごす場所に現れる女たちは全て予めセットアップされていた。
種男たちの行動範囲内に入り込む女たちは全て、国家に登録された優秀な卵子を持つ優秀な女たちなのである。種男たちは幼い頃からこのような環境が当たり前の世の中で育つため、何の疑問も不満も持たずに休暇を過ごす。
周囲が女ばかりのためか、闘争心や怒りといった感情はほとんどない。
種男たちの定年は39歳。余生は、28歳までに子供ができなかった女と過ごす権利が与えられる。よりずば抜けた能力、体力、美貌を持つ女100人が登録されており、種男はそのリストの中から、この女たちと最高3ヶ月まで過ごせるのだ。
もちろん、定年以降はポポリタンドリンクを飲み続けなければならない。このポポリタンドリンクを大量に飲み続けることにより、男性平均寿命は42歳となってしまったが……。