東京ゼロメートル地帯を遊水地に

洪水災害に危険が叫ばれている現在、このような政策がなされなくても、個人レベルで他のより安全な地域に自力で移転する人が出てくると思う。

こういう人が増え、転出した跡地がなかなか埋まらず、年月を経るごとにこの5区(墨田区・江東区・足立区・葛飾区・江戸川区の江東5区)の人口が減り、市街地が過疎化することも考えられるが、それはそれで良いという考え方もある。

なぜならば、大洪水時の避難者数や被害者数が減るからである。でも自然にそのように進むのであれば、やはりここは将来のまちづくりを考えた、計画的な湿原化を目指した方が良い。

また移転者が増え人口が減り極端な過疎化が進み、住宅街が低密度化、すなわちスカスカの状態になると、空き家のところで述べるが、それはそれでまた別の新たな問題が生じて来る。

そういう場所での防災や治安維持は税収が減っても行政として手を抜くわけには行かないし、また電気・ガス・水道・通信などの供給とそれらのインフラ維持もどんなに非効率になっても提供者は止めるわけにいかない。これらのコストは最終的には国民全員の負担となる。

だから国は、なるべく早くそこから移住してもらえるよう、さまざまな施策を講じることになる。

例えば今の排水ポンプが老朽化したら代替のものは設置しない、堤防の強化は、今後は行わないなど危険度が増すということを住民に理解させなければならなくなる。

これは居住権の侵害だとか、国が国民に対して最小レベルの安全を放棄している、などと訴え出る人が出て来るかも知れないが、誰も損をしない形で危険から逃れるためにはその方法は皆で考えなければならない。そして筆者はこの方法しかないと確信している。