第三章 第三の人生スタート
火曜日、今日は絵画教室。十月下旬になって、少し寒い。薄手のコートを着て出かけた。
教室について準備をしていたら、偶然に会う男性が、
「昨日は本当にびっくりしましたね」
「私もびっくりしました。うふふふ」
笑ってしまった、ついうっかり。
「今日教室の帰りお茶でもしませんか」
誘われた。悪そうな人でもなさそうだし。
「いいですよ」
「じゃ、後で」
不思議と嫌な感じではない。
教室が終わって近くのカフェに着いたら男性が先に居た。コーヒーを注文して席に座った。
「余りにも偶然に会うので気になっています。七回です。僕は、今井俊輔と言います」
「私は、阿部です。絵画教室は長いですか」
あっさり返事した。
「三年です」
と言った。
「見せてもらってもいいですか」
「はい、どうぞ」
スケッチブックを渡してくれて、開いて見たら、とても優しい色使い。
「わぁー優しい色使いですね。とても、素敵です。私もこんな風に描けるようになりますかね」
「ほめてもらって嬉しいな。阿部さん、絵を見せて下さい」
「恥ずかしいです」
「阿部さんは始めたばかりだから、気にしなくていいですよ」
私のスケッチブックを渡した。今井さん、少し驚いている。
「僕の絵と似ていませんか? すごく優しいタッチと色使いで描かれるんですね。とても素敵ですね。今度、教室終了後、時間があれば絵を見に行ったりしませんか? 小さなギャラリーを僕は結構知っていますよ。とても勉強になります」
「見たいです。時間が合えば一緒に行きましょう」
時計を見たら六時を回っていた。
「こんな時間になっています。帰りましょう」
一緒にカフェを出た。
「阿部さん、来週、早速ギャラリーに行きましょう」
「えぇ、分かりました」
と別れた。少し気を使って疲れた。思ったよりも紳士で、優しそう。意外と素敵な方だ。
毎日、あっという間に過ぎた。明日は、絵画教室だ。絵を見に行く約束をしてしまったけど、少し迷っている。気分転換で行ってみようかな。
グレーのスカートに白のブラウス、大好きな水色のカーディガン。教室が終わって、
「阿部さん、行きましょう」
と教室を出た。
「近くに小さなギャラリーがあります。気に入ると思います」
電車で二十分。雰囲気の素敵なギャラリーだった。絵の展示は少ないけど、どの絵も優しい感じの絵だった。私の好きな色使いの優しい絵ばかりで心が落ち着いた。
「好きでしょう」
「えぇ、とても好きです。心が落ち着きます」
いつの間にか閉館時間。もうこんな時間になっていた。とても良かった。