「そういう状態なんで申し訳ないけど来て診てくれないかな」

だがいい返事はなかったようで、「だんだん悪くなってるんですよ。このままだと痰が切れずに呼吸ができなくなるかと思って心配してさ。とにかく診るだけでも診てくれませんか。抗生物質を飲ませてもらうだけでもいいんだけど。寒がってこの状態ではこちらから運ぶことができないくらいなんですよ」

それでも電話の向こうでは往診することに難色を示しているようであった。

長兄は語気を強めて、「分かった分かった。もういいですよ。私が行くから薬を用意してくれるかな」それも診察をしてからでなくては処方ができないことを言われたらしく、自分はやっとのことで話に割り込んだ。

「俺だったら大丈夫だよ。もっと暖かくして寝るから。明日になれば、少しは良くなっていると思うよ」

長兄はイライラしながら電話を切った。その後少しずつ呼吸が楽になり、眠れたせいか翌朝痰が止まっていた。熱も平熱近くに戻っていた。