その結果、コーポレートガバナンスもタガがはまって、経理、人事の順法も機能し、その過程で不都合な事実も取締役会で開示しました。
真摯な姿勢で開示し、謝罪し、対策に動き、対策結果を報告する、その一途さで、主要顧客の取締役の信頼を得ることができました。累損が一掃された決算を最後に私は勇退し、後進に託しました。
財務取締役の経験事例2
有名インド財閥が相手の合弁会社
この合弁会社の株主は、親会社とその有名インド財閥の2社でした。
創立時から、そこそこ配当も出していましたが、ある年の新興国ショックで業績が一転。私が担当についた3月の決算予測で、いきなり債務超過の見込みが出て、私自身がショックを受けました。
当時インドには、シックカンパニー法という債務超過会社に対する措置を決める法律があり、場合によっては、政府に経営権を奪われる可能性がありました。
私の最初の仕事は、緊急事態発生を合弁相手に報告することでした。当然のことながら、非常に不快感を持たれました。そこからが、信頼回復のための会社再建です。
まずは、債務超過を回避するための緊急増資の決行と、工場活動による再建計画、および合弁相手へのそれらの報告です。
この会社の場合、まずは前記2点の活動に絞り込み、財務取締役がやるべき必須5項目は、特例として後回しとしました。儲ける体制の構築を親会社の事業部と合弁相手とですり合わせ、実績が見えだしたタイミングで、必須5項目に着手しました。
死にかけている人間には、まず第一に蘇生が必要で、それは会社も同じです。蘇生措置が第一優先です。
正念場は、累損のある会社の立て直し、単年黒字、かつ、累損一掃、配当復活が目的で、延命措置が成功すると、工場の改善活動も進み、コーポレートガバナンスにタガがはまり、経理、人事の順法も機能し始めるのです。
繰り返しで恐縮ですが、一番の宝はこうしたプロジェクトで苦楽を共にすることにより、インドの会社の皆さんの実力が上がることです。
成功体験の共有に勝る人材育成はありません。