踊る大紐育
ルイ・B・メイヤーはスタジオ内の理髪店でジーンを呼び止め小声で言った。
「私が間違っていたようだ。君たちは立派な仕事をしたよ。」
一九四九年六月、チャールズ・ウォルターズの元に監督を引き受けるようにとの依頼が届いた。プロデューサーはジョー・パスターナク、主演はジュディ・ガーランドとジーン・ケリー。「サマー・ストック」という名の作品だった。しかし、届いた脚本を読んだウォルターズはその内容にがっかりした。女性農場主の納屋で皆が大騒ぎをしながらショーを立ち上げるという古くさい話だったからだ。
ガーランドは精神的な不安定さのため、一ヶ月前に「アニーよ銃をとれ」の主演を降板させられたばかりだった。そんな彼女を支える目的でスタッフも選ばれていた。
前年主演した「イン・ザ・グッド・オールド・サマータイム」(‘49)の撮影が無事に終了していたことから、プロデューサーは同じパスターナクに、監督は以前から彼女と信頼関係にあるウォルターズに白羽の矢が立った。
企画会議が始まると、ウォルターズは脚本への不満―――物語があまりに陳腐で、これまでいくつもの映画で使い古されている。ガーランドの役はただ純真なだけで、演技の才能を発揮する場がない。仮にこのままのストーリーで行くなら、もっと面白い場面を入れられる脚本家を使うべきだ―――を述べた。
しかしドーア・シャーリーの考えは変わらず、製作はそのまま進行していった。