今は機械化が進んだので昔と比べて楽になったと思いますが、私は田植えはすごい仕事だと思っています。子供は親の手伝いをするのは当然だという時代だったこともあり、私も嫌々やっていたと思います。

お米は八十八と書き、上から読んでも下から読んでも八十八になります。四国八十八ヶ所と同様にお米は八十八の手を加えないと育たないという意味を持つとおり大変な農作業です。

織田は盆地のため、山から流れてくる川の水を水田に利用しています。その水を管理するのも大変で、朝早く起きて見に行ったり、仕事終わりに確認したりしなければなりません。

また日照りが長く続くと水田の水がなくなってしまい、水路の取り合いもありました。干ばつが長く続いた日は、川の水を軽トラで何往復もして運びました。広い水田に水を運ぶのは、スプーンでお風呂の水を満たすくらい気の遠くなる作業です。

このように苦労してできたお米ですから、一粒一粒、大切に扱い感謝しながら頂きました。

以前、フランスでミレーの「落穂拾い」を見た時には昔を思い出して、いつの時代にもどこの世界でも同じ苦労をしていたのだと感激しました。機械化された後もコンバインがすべての稲穂を刈ることはできないので、ミレーの絵のように稲穂が落ちていないか一生懸命探します。

現在の状況を見ると、家を継いで兼業農家をされているところもありますが、多くは稲作をやめてしまっています。