都市と地方の豊かさの方程式
日本は今日、婚姻困難社会を迎えているのだそうです。2015年国勢調査では、生涯未婚率(50歳時点で結婚したことのない人の割合)は、男性は23.4%、女性は14.1%と過去最高を記録しました。さて、過去最高というからには、過去はどうだったのでしょう。参議院「立法と調査」260号「歴史的に見た日本の人口と家族」というお誂え向きの資料があります。
これによれば、江戸時代まで遡ると、確かに地方はほぼ皆婚だったようです。しかし一方で、江戸の住民の婚姻率は50%以下(男)でした。江戸の人口は武家(つまりサラリーマン)と町人がほぼ半数ずつを占めていたといわれ、町人の職業は日雇稼業、棒手振等の不定期就労者が多数を占めていました。「昔も今も江戸(東京)は独身者と非正規雇用が多い街だったのである」とこの資料はまとめています。
江戸時代は身分制度や政治的不平等など問題があったにせよ、鎖国経済を持続できるだけの、都市と地方の調和があったはずです。
江戸好きの方々によって、ほのぼのとした理想の時代の都市として語られることも多い江戸ですが、実は、昔も今と変わらず独身者と非正規雇用が多い、モノの生産力が無く人口を吸収するだけの、消費主体の街であったと言えそうです。
さて、今日の「地方」の問題のゴールが「豊かさ」に置かれるということには、異論はないと思います。そして問題の原因も解決策もつまるところ人口の増減と結び付けられて考えられています。しかし、その実相は正しく捉えられているのでしょうか。そのような疑問から人口の増減と豊かさの関係を調べてみました。
人口については、手っ取り早くアクセスできる1884年と2010年のデータを使います。
残念ながら1884年の人口データでは北海道が欠けていたので北海道抜きの分析です。豊かさについては、勤労世帯の可処分所得を代用特性として選びました。さて、2013年のデータになりますが、可処分所得の最も高い都府県は富山県です。
1884年から2010年にかけて日本の人口は3800万人から1億2800万人に増加しました。その増加率は340%です。その間の富山県の人口増加率を見てみると156%しかありません。(図1)