「申し遅れました。私は根本の妻です。そして、私の両親が他界したので実家が空き家になっています。もしよろしければ実家を使ってください」
彼らはしばらく顔を見合わせて躊躇していたが、リーダー格の男性が言いだした。
「はい。喜んでそうさせていただきます」
みんな頭を下げた。そして、「ヤッタ~!!」ジャンプしたりガッツポーズを取ったりで全員が大喜びだった。
ホームレスは六人。二十代前半から三十代前半だ。上から色白で目の細い瞬。髪が天然でボサボサ、色黒ののぞむ。小柄でイケメンの公平。目立ちたがり屋でお調子者の友郎。一番背の高い大地。そして、痩せ型で心優しい凜だ。公平、友郎、大地は同い年である。
佑と中西の車で里奈の実家へ向かった。途中、ホームセンターへ寄り、里奈と佑と中西の三人で買い物をした。シャンプー、ボディーソープ、髭剃り、タオル、下着、服、それに散髪用のハサミを買った。六人は風呂にも入っていなかったため、車で待った。
車の中は悪臭が充満していた。
買い物の後、車の中でいろんな話をした。六人とも施設で育って養子にだされたこと、新しい家に馴染めなかったこと、板金塗装屋で住み込みで働いたが倒産して職を失ったこと、その板金塗装屋に子供の頃、養子にだされたのが中西だということ。里奈の実家に着いた。
「ここが、奥さんの実家ですか?」
友郎が言った。
「ええ。狭いですが、遺品整理して物はほとんどなくなっているわよ」
「お邪魔しま~す!」
「お邪魔します!」
玄関に汚い靴が並んだ。
「あっ、靴買うの忘れちゃったわ」
「里奈! もう、遅いからいいよ。今九時くらいだよ。靴屋なんてやってないよきっと」
「じゃあ、食料買ってくるわ。お酒も一緒に買うからシャワーと散髪お願いね」
「わかった」
などと言いながら、里奈と佑はワクワクしていた。それ以上にホームレスたちも嬉しかったに違いない。
「ヤッタ~! 屋根のある家だ!」
「屋根だけじゃないぞ! 壁も窓もある」
「風呂もトイレも台所もあるよな」
「なんか、夢見てるみたいだ」
「夢でもいいよ。ずっと覚めないでほしいよな」