ライバルと初めて出会う野辺山合宿
新シーズンが始まる。翼は、小学6年生になった。この一年で、身長は10cm以上も高くなる。
横浜アイスアリーナに剛と翼がいる。
「翼、新しいシーズンで曲、衣装、演技の内容をすべて新しくするぞ」
「はい、凄く楽しみです」ワクワクする翼。
「7月には全国有望新人発掘合宿がある。そこまでにある程度仕上げていくぞ」
「新人発掘合宿?」
「通称野辺山合宿と呼んでるんだが、ノービスクラスの有望な選手を全国から集めて合宿するんだ」
「私も参加できるんですか?」
「そうだ」
嬉しそうな笑顔で「楽しそう! 友達できるかな」
「遊びに行くわけじゃないぞ」
「すいません」
剛は真顔になって「そこで、今年力を入れたいのがスピンだ」
「スピン?」
「もちろん、スピンも以前とは比べられないほどうまくなっている。ただもう一段上を目指したい」
「わかりました」
「自分で好きなスピンってあるか?」
「自分が滑るので好きというのは特にないんですが、他人のを見るのではビールマンスピンが好きです。うまい人のビールマンスピンは美しいなって思っちゃいます」
「そうか、でもその感覚は大事だ。自分が好きなスピンをうまく回れたら嬉しいだろ」
「そうですね」
「翼も知っているとおり、スピンは大きくわけると3種類ある。直立した状態で回るアップライトスピン。翼の好きなビールマンスピンもアップライトスピンの1つだ。それから、しゃがんだ状態で回るシットスピン。T字型で回るキャメルスピンだ」
「キャメルスピンで挑戦したいスピンあります」
「なんだ?」
「ドーナツスピンです。今までやったことないですが」
「そうか、ドーナツスピンか、よし、やってみよう。今年の目標できたな」
「はい!」
「それじゃ、さっそく練習するぞ。スピンは練習するほどうまくなる」