3人はゴーグルを降ろした。
「弘人、予定では明日には帰るからな、後は頼むぞ」
「はい、分かりました。お気をつけて……」
弘人は深々とお辞儀をする。シマとアツシはぼそぼそと会話をする。シマさん、あの秘書全部知っているんですか……ああ、信頼に足る男だ……あいつがいなかったらわたしは総理大臣になれなかった。
もし、この時代に戻って来れなかったら……一人ぐらい知っていなかったら寂しいだろ……寂しいとか、そういう問題ではないような……シマとさくらは一緒に、アツシは単独で特別強化戦闘服甲号に入り込み、TENCHIにまたがる。
「行きますよ」
ビビビドヒューーン甲高い機械音をさせ三人を乗せたTENCHIは消え去った。
「……」
テレビ局の屋上に一人残された家具屋弘人は夜空を見上げ、これから起こることに思いを馳せた。
第17話 鹿屋航空基地
広く長い滑走路、ここは神風特別攻撃隊の前線基地・鹿児島県鹿屋航空基地である。終戦までに908名が出撃した。
「いたたた……やっぱり頭痛えな」
シマは呟く。
「時間酔いですね……時間旅行っていいもんではないですね。それにしても、いててて……わたしは初めてなんで少し横にならせてもらいます」
オギャ、オギャとシマの横には大泣きする乳児が寝そべっている、小早川さくらである。
「……くれぐれも、勝手な行動はしないように、終戦の8月15日の夕方に東京の皇居に行ってください。私はそこで待っています。知っていると思いますが、午後0時ちょうどに玉音放送があります。
夕方の時間だと軍部のクーデター派も鎮圧されていますので安全です。また、その途中、ある人物が助けを求めます、その方を助けてください」TENCHIは浮上しながら喋った。「今度は、『助けた亀を捕まえて』じゃなく、誰なんだ」
「……あるアメリカ兵士」
シマの問いにTENCHIは応えた。
「アメリカ兵士! 終戦前に……」
「それでは、必ず8月15日皇居で、少しでも遅れたらあなた達は消滅します……」
「分かった」
ビビビTENCHIはそう言い終わると電子音を上げて空間から消え去った。