花とおじさん:第二話

「痛ー。動けない。くそー」

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マカダムはどんどん進んできて、高津は死角に入った。本日のKY(危険予知活動)ミーティングでは〝ローラーの死角に入らない。ヨシ!!〟がスローガンだった。

このKYを無視して作業した高津は、今まさにマカダムローラーに轢き殺されようとしていた。

まずい、これ以上、会社に迷惑はかけられない。

その時だった。

マカダムの後方で、仕上げの転圧を行なう、タイヤローラーの作業員が異変に気付き、クラクションを何度も鳴らした。マカダムの作業員は急停止した。

まさに危機一髪だった。右足が少しだけ巻き込まれていたが、けがはなかった。

「ばか野郎ー。何やってんだ!」

その後、高津は怒鳴られ続けた。結局、高津はその直後夜勤からはずされ、しかも、作業員1名を無駄にしてまでも、即アパートにダンプで送り帰された。

当然の処置である。高津には事故の前歴がある。さらに業務上過失致死又は致傷になるかもしれない大事故につながる事だった。高津は少しでも戦力になりたかった。

どうしても、あそこにふるいたかった。2300㎡の国道の表層工において、一箇所のマンホール回りなどとるに足らない事なのだが、ふるいぐらいしかできない高津にとってとても大事な事だった。

しかし、結局大きく足を引っ張った。夜勤は、警察の道路使用許可で、規制の開放時間が決められている。

時間を過ぎると、特に国道は現在、国土交通省管轄であり、監督は始末書どころか、現場中止の処分の恐れがある。高津1人の失敗で会社が赤字になるところだった。

その日の朝、会社の事務所に行き、社長に退職願を出した。

社長はすでに、現場監督から報告を受けていた。前回の事故では、高津に対して、労災その他の世話を焼いたが、さすがに今度は切れかかっていたところだった。