花とおじさん
うん、あかりがついている。花ちゃん驚くだろうなー。サンタクロースの格好に変身した高津はノックした。返事がない。あれーと思いながらドアを開けた。
目の前に、うつ伏せに倒れている華奈がいた。高津は動かない華奈に向かって、明るい華奈のいつもの冗談だと思い、
「何だよ、死んだふりしてんじゃねえよ」
と冗談で返した。冗談ではなかった。高津は、あまりの白熱の演技に、「アカデミー賞!」と称えたが返答がない。さすがにこれはおかしいと思って抱えた。華奈は完全に脱力している。
「やばい。おい。大丈夫か。そういえば心臓が弱いって言ってたな」
と言いながら、ほほを2~3回たたいた。
「あー、息がない。脈もない」
華奈にとっさに人工呼吸をしてみた。俺は、こんな形のキスをする予定じゃなかったんだ。
「花ちゃん、生き返ってくれー」
悲鳴にも似た人工呼吸をくり返す高津であったが、華奈は息をふき返さない。
「電話だ! 119番だ!」