タクは心配そうにミコトに聞いたが、本当は見当がついている。(ミコトのことだ、魔女を倒しにいくに違いないな。)

「ちょっと魔女狩りにね。」

茶目っ気たっぷりにミコトはそう言うと、いつものように笑っていた。タクの思ったとおりだ。

「一人じゃ危険だよ、俺も行く。」

心配でたまらずにタクはそう言ったが、ミコトは断じて聞き入れなかった。

「いいえ、私がいなくなったら、このお店の中にもモンスターが入って来るかもしれないわ。タクさんはここで、この子達を守ってあげて。」

ミコトは一人で戦うつもりなのだ。ミコトが店の奥から戻って来ると、その手には、しっかりと剣が握られていた。ミコトが、ついに本気で怒ったのだ!

「ミコト! その剣は? いつから持っていたんだよ。」

驚くタクにミコトは微笑みながら答えた。

「スライムカフェをオープンした時からね。もしかしたら、必要になる時が来るんじゃないかと思って。」

ミコトが剣を持った姿をタクは初めて見た。それは白銀色の、すっきりとした実に見事な剣だった。「もう行くわ。」そうタクに告げると、ミコトは後ろを振り返らずに店の外へ飛び出して行った。魔女の居場所は分かっている。

「はぁ……。」

タクがたまらずに深いため息をついた。すると隣で、一匹のスライムが口を開いた。

「やっぱり、ボク達のパパの言う通りだ。ミコトさんは、お爺ちゃんの親友だって。ミコトさんなら、絶対にボク達を見捨てない。」

その言葉にタクはハッとした。

「スライム達のお爺ちゃん……? そうか! あの時クリスタルをくれたスライムか!」

(そういうことだったのか……。)

何故こんなにもミコトにスライム達がなつくのか、その時初めて分かった気がした。

「確かにミコトなら一人で大丈夫だ。まぎれもなく、最強女戦士だからな。俺はここで、敵が来ないように見張っているか。」

そうつぶやくと、どっしりと椅子に腰掛けた。